オペアンプによるバンドパスフィルタは微分回路と積分回路から構成されています。 最初に微分回路および積分回路の動作について説明します。 オペアンプによる微分回路 オペアンプはプラス入力端子への入力電圧とマイナス入力端子への入力電圧の差を増幅して出力します。負帰還(NFB:Negative Feed Back)をかけたオペアンプを反転増幅(マイナス端子に信号を入力する)で使用した場合のゲインは G = R2/R1 になります。また、非反転増幅のゲインは G = 1+R2/R1 になります。以下の説明では非反転増幅の場合で説明しています。 コンデンサが無い通常の増幅回路の場合、入力電圧のG倍の電圧が出力に現れます。 R1と直列にコンデンサ(C)を接続すると少し様子が変わります。 直流電圧の場合の動作(入力電圧が急激に変化した場合の動作) 入力が急激にプラス電圧に変化した場合、コンデンサに電荷が溜まっていない状態では通常のオペアンプ増幅器の動作により出力にはG倍の電圧が現れます。出力がプラス電圧になるとR2およびR1を通してコンデンサ(C)に徐々に電荷が溜まります。コンデンサに電荷が溜まるとコンデンサの両端の電圧は上昇し、オペアンプのマイナス入力端子の電圧もそれに伴って上昇します。マイナス入力端子の電圧が上昇するとプラス入力端子との電圧の差が少なくなり、出力電圧は下がります。最終的にはマイナス入力端子の電圧はプラス入力端子の電圧と等しくなり、出力電圧は0Vになります。 この動作はCRによる微分回路と同様です。 後述する積分回路ではコンデンサと並列に接続する抵抗値を無限大にすると出力は直線的に変化しますが、微分回路ではコンデンサと直列に入れている抵抗値を0Ωにしても出力は直線的な変化はしません。これは、外部の入力回路に抵抗があるためです。入力回路の抵抗値が0Ωであれば直線的な変化をしますが、実際の回路ではできません。 交流電圧の場合の動作 交流電圧信号が入力された場合、周波数によりゲインが変化します。
周波数が低い場合
何故、カットオフ周波数で3dB下がるのかを知りたい方は「微分回路および積分回路の周波数特性」を見て下さい。 オペアンプによる積分回路 R2と並列にコンデンサ(C)を入れると積分回路の特性を示します。R2を無くしてコンデンサ(C)だけにすると、完全な積分回路になります。 直流電圧の場合の動作(入力電圧が急激に変化した場合の動作) 入力電圧が急激に立ち上がるとオペアンプの出力は上昇しようとします。コンデンサに電荷が溜まっていない場合には、コンデンサの両端の電圧は0Vで、マイナス入力端子の電圧と同じでなので出力は0Vです。コンデンサにはオペアンプの出力から電流が流れ込み、徐々に電荷が溜まります。コンデンサへの充電が進むにつれて、コンデンサの両端の電圧は上昇し、出力電圧が上昇します。R2が無い場合にはコンデンサに流れ込む電流は一定で、コンデンサの両端の電圧は直線的に上昇します。R2があると、この上昇は直線的ではなく、初期は速く変化し、後半はゆっくりと変化するカーブを描きます。 交流電圧の場合の動作 微分回路と同様、積分回路も交流信号が入力された場合、周波数によりゲインが変化します。
周波数が高い場合
foより高い周波数では周波数が高くなるのに従ってゲインは小さくなります。foにおけるゲインはfoより充分低い周波数のときのゲインより3dB下がった値になります。何故、カットオフ周波数で3dB下がるのかを知りたい方は「微分回路および積分回路の周波数特性」を見て下さい。 バンドパスフィルタ 上で説明したように微分回路は高い周波数を通過させるハイパスフィルタ(HPF:High Pass Filter)の特性をもち、積分回路は低い周波数を通過させるローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter)の特性を持っています。 この二つの回路を組み合わせると特定の周波数帯だけを通過させるバンドパスフィルタ(BPF:Band Pass Filter)を構成することができます。当然、HPFのカットオフ周波数よりLPFのカットオフ周波数の方が高い周波数でなければなりません。 |